フリーランスのお金管理と仕事道具

フリーで働く士業の雑記です。

フリーランスはあわてて会社を作らない方がいい理由

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どのぐらい儲かったら法人化すべきか?

ものすごくありふれたテーマですが、フリーランスは、「とにかく儲かってしょうがない!」とでもならない限り、会社を作らないほうがいいでしょう。

税理士業界一般でよく言われる売上1,000万円程度では全然足りないと思っています。

 

法人化のメリット

法人化するもっとも大きな理由は節税です。

個人と法人の税率の違い、法人から個人へ給与を払うときの給与所得控除、この2つの効果で税金が少なくなります。

個人の最高税率は45%(所得税)+10%(住民税)です。それに対して法人だとだいたい30%です。

最高税率を課される場合には、節税のメリットはたしかに無視できません。しかし、そうでない場合、法人化による不自由の方が目立ちます。

 

以下、法人化のデメリットを見ていきましょう。

 

役員報酬(社長の給与)が自由に決められない

法人の場合、1年のうちの初めの3か月に役員報酬の金額を決めないといけません。一度決めた役員報酬は毎月定額で支払います。

予想よりも儲かったからといって役員報酬を増額しても、決めた金額を超えた分は会社の費用にできず法人税を支払う必要があります。

 

会社のお金には自由がない

ただ単に、税金を少なくしたいのであれば、「会社にお金を残す」方が有利になることが多いのは事実です。

今後、法人税率は引き下げられる一方で、個人の所得税社会保険は負担増が見込まれるので、その傾向はさらに強くなります。

 

しかし、税負担を軽くすることだけをもって、「会社にお金を残す」ことを選択できるわけではありません。

役員報酬として個人に残したお金は、会社でも個人でも自由に使うことができます。しかし、会社に残したお金は会社でしか使うことができません。つまり、同じお金でも自由度が全然違います。

 

また、会社にお金を残した結果、生活費が足りないからといって、会社から社長へ「役員貸付金」を積み増せば、実質役員報酬とみなされ、税務調査で問題になることがあります。あとは、「役員貸付金」は銀行からも嫌われますね。銀行借入を行う際に厳しく追求されます。

 

会社に残したお金を個人に移すための方法が限られている

役員報酬にせず、会社に残したお金を社長個人に移すには、次の方法があります。

  • 役員賞与
  • 配当金
  • 役員退職金

どれを選んでも、会社で税金を払った後、個人に移すときにもう一度課税されます。つまり、二重に税金を払うことになります。

税金の面からは、役員退職金がもっとも有利ですが、あくまでも退職後の話であって個人がすぐに使えるお金とはなり得ません。

 

だったら個人にお金を残すために、会社を赤字にする、またはギリギリ赤字になる水準に役員報酬を設定すればよいのではないか。

私も小さい会社であれば、そうすべきだと思うのですが、ここで問題になるのが、社会保険料です。

 

小さい会社では、法人税所得税より社会保険料の方がよっぽど痛い

法人はたとえ社長1人であっても、組合健康保険と厚生年金への加入が義務付けられ、その結果、社会保険料が跳ね上がります。

 

個人事業主が加入する国民健康保険国民年金は、年収が高くなるとすぐに上限に張り付きます。国民健康保険の上限は年額85万円、国民年金は年額18万円、たとえ年収1億円でも合計は103万円です。

 

一方で、法人化して組合健康保険と厚生年金を支払う場合、会社+本人負担の社会保険料の合計は、だいたいい次のとおりです。

役員報酬

社会保険料

600万円(月額50万円)

約174万円(月額14.5万円)

960万円(月額80万円)

約240万円(月額20万円)

上限

約300万円(月額25万円)

 

国民健康保険国民年金の上限額と比較しても、ずっと大きな負担になります。社会保険料が払えなくて、資金繰りに行き詰まる会社は、めちゃくちゃ多いです。

 

今までは、法人化しても、組合健康保険と厚生年金に未加入の会社は多数ありました。

しかし、マイナンバー制度が始まった今後、未加入の会社は簡単に炙り出せます。最大2年の追徴金を受ける可能性もあるので、未加入のリスクは負うべきではありません。

 

ランニングコストがあがる

役員報酬社会保険に比べればささいな問題かもしれませんが、会社の経理はめんどうです。

おそらく税理士に頼むと思うのですが、3~5万円ぐらい追加でかかります。必要経費と割り切れるぐらい儲かっていれば、もちろん問題ありません。

 

というか、個人事業主の経理って楽すぎるのです。ある意味、適当でもいけます。もちろん、預金残高ぐらいはちゃんと合わせる必要あります。

しかし、ほとんどの場合、事業主借勘定、事業主貸勘定を使えば、つじつまを合わせることができてしまいます。会社だとそんな便利な勘定は使えません。

 

最近だと、「freee」や「MFクラウド」といったクラウド会計ソフト、またはパッケージソフトの「弥生の青色申告」とかを使えば、誰でも簡単に記帳できますからね。わざわざ人に任せる必要もないわけです。

 

あとは、法人だと利益が出ていなくても、年間7万円の税金(法人住民税の均等割)がかかってきます。

 

税務調査にあたる確率が上がる

個人事業主は、ほとんど税務調査が来ません。圧倒的に稼いでいれば話は別ですが。

もちろん税務調査が来ないから悪いことをしろと勧めているわけではなく、税務調査なんてこないに越したことはないわけです。対応の時間コストもバカにならないですからね。

税務調査が来にくいっていうのは、けっこう見過ごせないポイントです。

 

結局、どれぐらい儲かったら法人化すればいいの?

個人事業主であれば、まずは課税所得の圧縮を考えましょう。

きちんと経費を入れるのはもちろんのこと、それに加えて、確定拠出年金制度と、小規模企業共済を有効活用しましょう。

確定拠出年金は、月額最大68,000円まで掛けることができます。小規模企業共済は、月額最大70,000円です。

この2つの制度の素晴らしいところは、掛け金を払った時点で全額所得から控除できるところです。2つ合わせて月に138,000円、年間だと1,656,000円の課税所得を圧縮することができます。

 

経費を入れて、社会保険料を払って、確定拠出年金と小規模企業共済を積み立てて、それでもなお課税所得が900万円をゆうに超える場合には、法人化を検討してもいいのではないでしょうか。

なぜ900万円かというと、900万円超えると極端に所得税率が跳ね上がるからです。

もちろん所得税率が上がるのは900万円を越えた部分だけなので、ちょっと越えたぐらいでは個人事業主をおすすめすることに変わりはありませんが。

 

平成27年分以降の所得税速算表(引用元:国税庁HP)

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円を超え 330万円以下

10%

97,500円

330万円を超え 695万円以下

20%

427,500円

695万円を超え 900万円以下

23%

636,000円

900万円を超え 1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超

45%

4,796,000円

 

あまり儲かってないけど会社を設立してもいい場合

とはいえ、どうしても法人化しないといけない場合があることも理解しています。

それは、営業のときに社長の肩書が必要な場合です。取引相手が大きい会社の場合、個人では契約してもらえないこともあります。営業目的の場合は、法人化もやむなしでしょう。

 

あとは、優秀な人を雇いたい場合も法人化した方が有利だとは思うのですが、人を雇って組織化すると、もはやフリーランスではないですからね

 

そりゃあ、税理士の立場からいけば、会社を作ってくれた方が、お客さんが増えて儲かるわけですが。

 

しかし、営業目的でもない限り、フリーランスにとっては、個人事業主こそ至高!だと思っています。